近年、働き方の多様化が急速に進む中、現場のマネージャーの役割はますます重要になっています。リモートワークの普及、フレックスタイム制の拡大、そして労務管理に関する法規制の強化など、職場環境は大きく変化しています。このような状況下で、チームの生産性を維持しつつ、メンバーの満足度を高めることは容易ではありません。
本記事では、現場のマネージャーが直面する課題に焦点を当て、実践可能な5つのアプローチを紹介します。これらの方法を活用することで、多様化する働き方に効果的に対応し、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができるでしょう。
1.働き方の多様化の現状
働き方の多様化は、以下のような形で顕著に表れています:
リモートワーク/ハイブリッドワークの社会的普及
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、多くの企業でリモートワークが標準的な選択肢となりました。総務省の調査によると、2023年の段階で、大企業に務める従業員の半数雨以上がリモートワークを経験しています。また、ある調査ではリモートワークを経験した社員は、今後のキャリアとして、リモートワークや柔軟な働き方が認められている会社への関心が極めて高いという結果もでています。
フレックスタイム制の拡大
従業員のワークライフバランスを重視する動きが強まり、フレックスタイム制を導入する企業が増加しています。厚生労働省の調査では、2020年時点で大企業の約4割がフレックスタイム制を導入しています。
副業・兼業の増加
政府の働き方改革の一環として、副業・兼業の促進が図られています。リクルートワークス研究所の調査によると、2020年時点で副業を行っている人の割合は約8%とまだマイノリティーではありますが、その数と割合は年々増加しています。
多様な雇用形態
正社員だけでなく、契約社員、パートタイム、フリーランスなど、様々な雇用形態の労働者がチーム内に混在するケースが増えています。このことから、チーム内でのコミュニケーションや業務引継ぎなど、様々な点において新たな課題が生じています。
これらの変化は、ポジティブな側面もありながらも、一方で従来の画一的な労務管理では対応しきれない新たな課題を生み出しています。
2.管理職の負担増加の実態
働き方の多様化に伴い、管理業務はその難易度と複雑性が高まっており、管理職の負担が年々増加していると言われています。さらに、当社の独自調査では管理職の実に9割がプレイングマネージャーとして活動しており、そもそも管理職業務に当てられる時間が限られているという実態も浮き彫りになりました。
コミュニケーションの複雑化
リモートワークやハイブリッドワークの普及により、全員が集まっての対面でのコミュニケーションは少なからず減少しています。そのため、日々のコミュニケーションにおけるオンラインツールを活用した運用方法の確立や、チーム内の信頼関係の構築に、管理職はより多くの時間と労力が必要となっています。
成果管理/実労働時間管理の難しさ
従来の「出社時間=労働時間」という概念が通用しなくなり、個々の成果を適切に評価することが難しくなっています。特に、リモートワーク環境下では、メンバーの業務状況を把握することが容易ではありません。ホワイトワーカーエグゼンプションなどにより、労働時間管理の適応除外になっているワーカーが多いアメリカとは異なり、労務管理が厳格的な日本市場においては、この状況把握は管理職や人事部門を悩ませる大きな課題の1つです。
メンタルヘルスケアの重要性増大
市場環境が大きく変化し、キャリア自律なども謳われる中、孤立感や不安感を抱えるメンバーは増加し、メンタルヘルスケアの必要性が高まっています。特に現在の労働市場は売り手市場と言われており、メンバーの離職や休職による人員不足に柔軟に対応することは困難になっています。そのことから、メンタルヘルスのインパクトとリスクは以前よりも高まっており、管理職は今まで以上にチームメンバーの心理的な健康状態にも気を配る必要があります。
ワークライフバランスの管理
柔軟な働き方が可能になる一方で、仕事と私生活の境界が曖昧になるリスクも高まっています。企業としては、当然ガイドラインなどを通達している組織が多いのが現状ですが、最終的な判断は現場の管理職に任されている実態もよく聞かれます。管理職は、業務マネジメントを通じてチームメンバーの適切なワークライフバランスを支援する役割も担っています。
これらの負担増加に対応するため、今まで経験と勘で通用していたマネジメント業務にも、新たなスキルとアプローチが求められています。
3.日本における労務管理・労働時間管理の規制強化
近年、日本政府は「働き方改革」を推進し、労務管理や労働時間管理に関する規制を強化しています。ここでは、主な変更点をまとめています。
働き方改革関連法の概要
2018年に成立した「働き方改革関連法」は、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を目指しています。
残業時間の上限規制
2019年4月から大企業、2020年4月から中小企業に適用された残業時間の上限規制では、原則として月45時間、年360時間を上限とし、特別な場合でも年720時間を超えないよう定められました。
有給休暇取得の義務化
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、使用者は5日について、毎年時季を指定して与えることが義務付けられました。
同一労働同一賃金の原則
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止し、同一労働同一賃金の実現を目指しています。
これらの規制強化により、管理職は法令遵守を意識しつつ、チームメンバーの労働時間や休暇取得状況を適切に管理することが求められています。
4.現場マネージャーが取り組むべき5つの具体的アプローチ
効果的な1on1ミーティングの実施
定期的な1on1ミーティングは、チームメンバーとの信頼関係を構築し、個々の課題やニーズを把握する上で非常に重要です。
- 定期的な実施スケジュールの設定: 週1回または隔週で30分程度の時間を確保し、キャンセルしないことを原則とします。リモートワークの場合はビデオ通話を活用しましょう。
- 部下のニーズや課題の把握: 「最近の業務で困っていることは?」「チーム内で改善したい点はある?」など、オープンエンドな質問を投げかけ、メンバーの本音を引き出します。
- キャリア開発支援と目標設定のサポート: 「今後のキャリアでどんなスキルを身につけたい?」「次のステップに向けて何か準備していることはある?」といった質問を通じて、長期的な視点でのキャリア支援を行います。
チーム内コミュニケーションの活性化
効果的なコミュニケーションは、チームの生産性と満足度を高める重要な鍵です。
- オンライン・オフラインのコミュニケーションツールの効果的な使用: Slack、Microsoft Teams、Zoomなどのツールを目的に応じて使い分けます。例えば、即時性が求められる連絡はチャット、詳細な説明が必要な場合はビデオ通話を使用するなどのルールを設定します。
- 定期的なチームミーティングの開催: 週1回程度のチームミーティングを設定し、全体の進捗確認や情報共有の場を設けます。アジェンダを事前に共有し、効率的な運営を心がけましょう。
- 情報共有の仕組み作りとファシリテーション: プロジェクト管理ツール(例:Trello、Asana)を導入し、タスクの進捗や重要な情報を可視化します。また、チーム内での知識共有セッションを定期的に開催し、メンバー間の学び合いを促進します。
柔軟な勤務管理の実践
多様な働き方に対応するため、柔軟な勤務管理が求められています。管理職のみではなく、人事部門や企業としての方針や制度設計も必要な領域です。
- 個々の事情に応じた勤務時間の調整: 育児や介護など、個人の事情に応じて勤務時間を柔軟に調整します。例えば、コアタイムを設定しつつ、その前後の時間は自由に調整できるようにするなどの工夫が考えられます。
- 時間外労働の適切な管理と削減の工夫: 各メンバーの労働時間を把握し、特定の個人に業務が集中していないか確認します。必要に応じてタスクの再分配や業務プロセスの見直しを行い、時間外労働の削減に努めます。
- 有給休暇取得の促進と計画的な取得支援: チーム内で休暇取得の予定を共有し、互いにカバーし合える体制を作ります。また、長期休暇の取得を奨励し、リフレッシュの機会を設けることで、生産性の向上にもつなげます。
チームメンバーのウェルビーイング向上
メンバーの心身の健康を維持することが、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。そのためには、日々のマネジメントで以下のことを考慮・実践することが求められます。
- ストレスチェックの実施と対応: 定期的なストレスチェックを実施し、高ストレス者には個別面談を行います。必要に応じて、産業医や専門家への相談を促します。
- ワークライフバランスを考慮したタスク分配: 各メンバーの業務量や締め切りを把握し、特定の個人に過度な負担がかからないよう調整します。また、緊急時以外は業務時間外の連絡を控えるなど、プライベートの時間を尊重します。
- チーム内での相互サポート体制の構築: メンバー間で助け合える文化を醸成します。例えば、「助けが必要なとき」「手伝えるとき」を気軽に表明できる仕組みを作り、チーム全体で業務をサポートし合う環境を整えます。
業務効率化の推進
限られた時間と資源を最大限に活用するためには、短期的な活動だけではなく、中長期の視点を持った継続的な業務効率化が重要です。
- 既存ツールを活用した業務プロセスの見直し: 社内で利用可能なツールを最大限に活用し、業務の自動化や効率化を図ります。例えば、定型作業の自動化やデータ分析の効率化などが考えられます。
- チーム内での業務の優先順位付けと役割分担の最適化: 定期的に業務の棚卸しを行い、重要度と緊急度に基づいて優先順位を設定します。また、各メンバーの強みを活かした役割分担を行い、チーム全体の生産性を高めます。
- 定期的な業務改善ミーティングの実施: 月1回程度、チーム全体で業務改善のアイデアを出し合うミーティングを開催します。小さな改善案でも積極的に取り入れ、継続的な改善文化を醸成します。 これらの5つのアプローチを組み合わせることで、多様化する働き方に効果的に対応し、チームの生産性と満足度を高めることができるでしょう。
5.取り組みを始めるための「SMART」ステップ
新しい取り組みを始める際は、「SMART」の原則に従って計画を立てることをおすすめします。
S: Specific(具体的な目標設定)
「チームのコミュニケーション頻度を増やす」ではなく、「週1回のチームミーティングと、メンバーごとに月2回の1on1ミーティングを実施する」など、具体的な行動目標を設定します。 M: Measurable(測定可能な指標の決定)
目標の進捗を数値化して追跡できるようにします。例えば、「チームメンバーの満足度スコアを現在の7.0から3ヶ月後に8.0に向上させる」といった具体的な指標を設定します。 A: Achievable(達成可能な計画立案)
チームの現状や利用可能なリソースを考慮し、無理のない計画を立てます。段階的な目標設定も効果的です。 R: Relevant(関連性の確認)
設定した目標が組織全体の方針や目標と整合しているか確認します。上司や人事部門と相談し、取り組みの方向性が適切かどうか確認するのも良いでしょう。 T: Time-bound(期限の設定)
「3ヶ月後までに」「今年度末までに」など、明確な期限を設定します。また、その期限に向けた中間マイルストーンも設定し、進捗を定期的に確認します。 この「SMART」ステップを意識することで、漠然とした改善意識を具体的な行動計画に落とし込むことができます。
6.効果測定の3つの主要指標
取り組みの効果を適切に測定するため、指標を事前に設定することは重要です。
チームメンバーの満足度
四半期ごとにアンケート調査を実施し、10点満点でチームの満足度を評価します。仕事のやりがい、チーム内の人間関係、ワークライフバランスなどの項目別スコアも確認し、改善点を特定します。
タスク完了率と品質
プロジェクト管理ツールなどを活用し、期限内に完了したタスクの割合を月単位で追跡します。同時に、成果物の品質評価も行い、効率と品質のバランスを確認します。
チーム内のコミュニケーション頻度と質
1on1ミーティングやチームミーティングの実施回数、チャットツールでの情報共有の頻度などを数値化します。また、定期的なフィードバックセッションを設け、コミュニケーションの質的向上も図ります。
これらの指標を継続的に測定し、トレンドを分析することで、取り組みの効果を客観的に評価し、必要に応じて戦略を調整することができます。
7.まとめ
働き方の多様化に伴い、現場のマネージャーの役割はますます重要になっています。本記事で紹介した5つのアプローチを実践し、「SMART」ステップに基づいて計画的に取り組むことで、チームの生産性と満足度を高めることができるでしょう。
効果測定を通じて継続的に改善を図り、必要に応じて外部リソースも活用しながら、変化する環境に柔軟に対応していくことが求められます。マネージャーの皆さまには、これらの取り組みを通じて、より強固で生産的なチーム作りにチャレンジしていただきたいと思います。
参考資料
- 厚生労働省「働き方改革関連法」概要: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
- 総務省「令和2年通信利用動向調査」: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/210618_1.pdf
- リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020」: https://www.works-i.com/research/works-report/item/210331_jps2020.pdf これらの資料を参考に、最新の動向や法令を確認しながら、チーム管理に取り組んでいただければ幸いです。
状況把握を1秒で!「TONOME Work (トノミー)」
TONOME Workは、今まで実態を把握できていなかった個人単位のタスク・業務を簡単に可視化することができるツールです。また、タスクは全て組織目標に紐づけられているため、戦略の重要性を考慮しながら、客観的なデータに基づく日々のチームマネジメントが可能です。
これにより、管理職・メンバー間における状況把握の負担を大幅に削減します。
TONOME Workは、納期や優先順位を考慮したAIによるオートスケジューリングによる作業効率化や個人の時間に対する意識付けや、目標別・タスク別の工数実績管理、労働時間(キャパシティ)管理、目標管理などの機能があり、シンプルなUI/UXで小規模な組織から活用いただけます。
[

](/)

