10月を迎え、あなたも下期の目標設定面談の準備に追われている頃ではないでしょうか。上期の振り返りと目標の見直しを限られた時間で進めるとなると、面談の進め方に迷うのは無理もありません。
システム上の目標は、督促を重ねていけば、締切までにはおおむね埋まっていくものです。ところが半年後の評価会議で「この目標を本人はどう理解していたのか」と聞かれると、すぐに答えられる上司もいれば、記憶をたどって言葉に詰まる上司もいます。
こんな場面に心当たりはありませんか。
● 部下が出した目標を読んでも、本人がどこまでやるつもりなのか、はっきりとは分からない
● 文面は整っているのに、半年後に評価を説明しようとすると、当時のやり取りを思い出せない
● 同じ記入例を渡したのに、チームごとに目標の粒度や難しさがずいぶん違って見える
目標の質がそろわない原因の多くは、面談の中身が当事者の二人以外から見えず、上司にやり方へのフィードバックが返らないという構造にあります。この記事では、目標の質が上司ごとにばらつく3つの構造を整理したうえで、部下と同じ言葉で合意をつくる5つのポイントを紹介します。読み終えるころには、面談ガイドに足したい聞き方が見えているはずです。
それでは詳しく見ていきましょう。
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1. 目標設定面談とは?下期の面談で確かめること
目標設定面談は毎期くり返されるぶん、「いつもの手順でいいだろう」と流れ作業になりやすいものです。しかし、そこで何に合意したかが、半年後に評価を説明するときの土台になります。
目標設定面談とは、上司と部下が半期などの一定期間の目標を話し合い、目標の中身と達成の基準に合意する面談です。多くの企業では、MBO(目標管理制度)の運用の一部として期初に行われます。
目標管理の出発点とされるのは、経営学者のピーター・ドラッカーが1954年の著書『現代の経営』で示した考え方です。原著では「Management by Objectives and Self-Control(目標と自己統制によるマネジメント)」と呼ばれています。
ドラッカーの言葉に「自己統制」が入っている点は、見落とされがちです。目標は上司が部下に割り当てるだけのものではなく、本人が自分の仕事を管理するための手段として位置づけられていました。
面談で本人の言葉に落ちていない目標は、この前提から外れてしまいます。例えば、上司が用意した文面に部下が「分かりました」と答え、そのまま登録する場面を想像してみてください。
1.1. 期初の面談と下期の面談は、出発点が違う
下期の面談を、期初の面談の続きとして進めたくなるのは自然なことですが、二つの面談は出発点が違います。期初の面談は、まだ起きていない仕事について見通しを立てる場で、下期の面談は、上期に実際に起きたことを材料にして目標を直す場です。
| 観点 | 期初の面談 | 下期の面談 |
|---|---|---|
| 出発点 | 組織の計画と本人の希望 | 上期の結果と、そこで分かった事実 |
| 主な問い | 何を目指すか | 何を続け、何を変えるか |
| 起きやすいこと | 目標が抽象的なまま決まる | 上期の数字を少し直して終わる |
| 期末までの時間 | 1年または半年 | 半年 |
下期の面談で特に起きやすいのは、上期の数字を少し動かして済ませてしまうことです。例えば、「上期は届かなかったので、下期は少し上乗せしましょう」と、数字だけが先に決まっていく場面を想像してみてください。
上期に何がうまくいき、何が想定と違ったのかを話さないまま数字だけを直すと、部下は何を変えればよいのか分からないまま下期を迎えることがあります。数字の裏にある事実を一緒に確かめることが、下期の面談の出発点になります。
上期の評価のフィードバックと同じ日に目標の面談を行う会社も少なくありません。その場合は評価の話に時間を取られてしまい、肝心の目標の話が短くなりがちです。評価と目標を同じ面談で扱うなら、目標の話に使う時間を最初に決めておきましょう。
1.2. 面談のゴールは、同じ言葉で合意すること
シートを埋め終えると、ひと仕事終えた気持ちになるものですが、目標設定面談のゴールはシートの完成ではありません。この面談で目指すのは、上司と部下が同じ言葉で、何を期待しているかと、何をもって達成とするかに合意することです。
目標がどれだけ具体的かが成果を左右することは、研究でも示されています。心理学者のエドウィン・ロックとゲイリー・レイサムは、多くの実験と調査の結果を目標設定理論として整理しました。具体的で難しい目標を持つ人のほうが、「ベストを尽くせ」という曖昧な目標を持つ人より高い成果を上げるという考え方です。
この理論では、本人が目標に納得していることと、進み具合についてフィードバックがあることが前提として挙げられています。面談に置きかえると、「どこまでやれば達成か」が二人のあいだで共有され、途中で確かめる機会があるということです。
文面が具体的でも、その意味を二人が違うように理解していれば、期末に評価がずれます。例えば「顧客対応の質を高める」という目標で、上司は苦情の削減を、部下は対応の速さを思い描いている場面を想像してみてください。あなたの面談でも、同じ文面から二人が別々の景色を思い浮かべていないか、確かめてみてはいかがでしょうか。
2. 目標の質が上司ごとにばらつく3つの構造
同じ評価者研修を受け、同じ記入例を見て書いたはずの目標なのに、粒度も難しさもそろわない。そんな状況を前にすると、特定の上司の力量を疑いたくなるのも無理はありません。
けれども、ばらつきが特定の上司に限らず広く見られるなら、原因は個人の外にもあると考えられます。目標設定面談という仕組みの中に、次に挙げる3つの構造が潜んでいるからです。
2.1. 面談の中身が、当事者の二人にしか見えない
制度を運用する側から見えるのは、システムに登録された目標の文面だけです。面談で上司が何を伝え、部下が何に納得し、どこで言葉を飲み込んだのかは見えません。
文面が整っていても、上司が書いた案を部下がそのまま登録しただけかもしれません。反対に、文面は粗くても、二人のあいだでは細かい合意ができているかもしれません。
文面だけではこの二つを区別できず、期末に評価への疑問が出て初めて、目標の理解のずれに気づくこともあります。
例えば、期末の評価面談で部下が「あの目標は、そこまでの意味だとは思っていませんでした」と話し始める場面を想像してみてください。そうなってからでは、半年前の目標設定面談の合意を結び直すのは簡単ではありません。
2.2. 上司に、面談のやり方へのフィードバックが返らない
上司が自分の面談を振り返る機会は、仕組みとして用意されていないことが少なくありません。研修でロールプレイをしても、一度きりの練習で終わってしまい、ほかの上司の面談を見る機会もないままです。
例えば、あなたが半年前の自分の面談を思い返してみたとしても、どれだけ自分が話し、どんな問いを投げたのかは、つかみにくいものです。
その結果、それぞれの経験や、かつて自分が受けた面談を手本にして、面談を続ける上司が少なくありません。問いを重ねて部下の考えを引き出す上司もいれば、目標を読み上げて確認だけで終える上司もいます。どちらの場合も、自分のやり方をほかと比べる手段は、仕組みとして用意されていません。
2.3. 記入例は書き方をそろえても、話し方はそろえない
記入例やガイドは目標の書き方をそろえ、数字や期限を入れて動詞で書くといった形式は整っていくでしょう。しかし、面談で何を聞き、部下の言葉をどう引き出すかまではそろいません。
形式が整った目標ほど、その中身にずれがあっても、外からは見えにくくなります。記入例を充実させるほど「目標設定はできている」という印象が強まり、面談の質の差は表に出にくくなるのです。
よく行われる対策を並べると、そろうものとそろわないものは次のように分かれます。
| よく行われる対策 | そろうもの | そろわないもの |
|---|---|---|
| 評価者研修 | 制度の理解、評価の観点 | 実際の面談での聞き方 |
| 記入例・テンプレート | 目標の書き方 | 部下の納得と理解 |
| 締切と督促 | 登録の時期 | 面談の中身と時間 |
表のとおり、対策がそろえるのは登録の時期や書き方であり、面談で交わされる言葉には届きにくいのが実情です。次の章では、その言葉を面談の中でそろえていく進め方を、順を追って見ていきます。
3. 下期の目標設定面談の進め方|合意をつくる5つのポイント
限られた時間で、上期の振り返りも下期の期待も話さなければならないとなると、何から切り出せばよいのか迷うものです。そこで、下期の面談の進め方として、次の5つのポイントを順に押さえてみてください。
- 上期の事実を、部下から先に話してもらう
- 下期の期待を、一つか二つに絞って伝える
- 期待を、部下の言葉で言い直してもらう
- 達成したときの状態を決める
- 相談の条件と、中間で確かめる日を決める
この順番には理由があり、上司が評価や期待を先に話すと、部下はそれに合わせた答えを返しやすくなるからです。事実を部下から先に話してもらえば、上司の見立てと部下の見立ての違いが面談の最初に見えます。
3.1. 事実と期待を分けて話す(ポイント1・2)
ポイント1では、上期の結果を部下から先に話してもらい、上司は評価を言わずに、事実を一緒に並べることに集中しましょう。例えば「その仕事が進んだのは、何が効いたからだと思いますか」と尋ねてみる場面を想像してください。どの仕事がなぜ進み、どこで想定と違ったのかを具体的に聞くと、下期に何を変えるべきかが見えてきます。
ポイント2では、上司が下期の期待を伝えますが、組織の目標をそのまま読み上げるのではなく、特にこの部下に期待していることを一つか二つに絞りましょう。期待が多すぎると、部下はどれを優先すればよいのか判断しにくくなります。
3.2. 理解のずれを面談の中で見つける(ポイント3)
5つのポイントの中で最も省かれやすく、省いたときの影響が大きいのがポイント3で、上司の期待を部下が自分の言葉で言い直します。
例えば、あなたが「下期は新規の提案を増やしてほしい」と伝えたのに、部下が「既存のお客様への連絡を丁寧にします」と言い直す場面を想像してみてください。言い直した内容が上司の意図とずれていれば、その場で直せるため、期末にずれに気づいてから直すより、手間はずっと小さく済みます。
部下が言い直した言葉は、できるだけそのまま目標の文面に使いましょう。上司が整えた文章より本人の言葉のほうが、半年後に読み返したときに当時の合意を思い出しやすくなります。
3.3. 期末に確かめられる形にする(ポイント4・5)
ポイント4では達成の基準を決めますが、数字で表せる目標なら、数字で書けば十分です。数字にしにくい仕事は、達成したときに周りから何が見えるかという状態で書きましょう。
たとえば後輩の育成なら、「後輩が一人で顧客先の定例会を進行できている」のように、第三者が見て分かる形にします。
ポイント5で決めるのは、途中で相談する条件と、中間で確かめる日です。下期の面談であれば、12月か1月に中間の確認日を入れておくと、期末を待たずに目標を直せます。30分の面談なら、時間の配分と聞き方は次のようになります。
| 時間の目安 | ポイント | 聞き方の例 | 主に話す人 |
|---|---|---|---|
| 0〜8分 | 1. 上期の事実 | 「上期で一番手応えがあった仕事と、想定と違った仕事はどれですか」 | 部下 |
| 8〜13分 | 2. 下期の期待 | 「下期は、特にこの二つをお願いしたいと考えています」 | 上司 |
| 13〜20分 | 3. 自分の言葉で言い直す | 「いまの話を、自分ならどう言い表しますか」 | 部下 |
| 20〜26分 | 4. 達成したときの状態 | 「3月にこれができていたら、周りからは何が見えていそうですか」 | 二人で |
| 26〜30分 | 5. 相談の条件と中間確認日 | 「どんなことが起きたら早めに相談しますか。12月のどこで確かめましょうか」 | 二人で |
面談のあと24時間以内に、合意した言葉を記録して部下に確認してもらいましょう。記録の確認までを面談の一部と考えると、言った言わないのずれを防げます。
4. 下期の面談で起きやすい3つの難しい場面
5つのポイントを押さえていても、実際の面談では「この場合はどうしたらいいのだろう」と手が止まることがあります。あなたが迷いやすい場面のうち、よく起きる3つについて、考え方を整理しておきましょう。
4.1. 上期の目標が未達のまま、下期を迎える部下
例えば、期の途中で担当が変わったのに、目標だけが期初のまま残っている場面を想像してみてください。上期の未達をそのまま下期に持ち越すと、部下は最初から挽回の重さを背負うことになります。
まずポイント1で、未達の原因が本人の行動にあるのか、担当の変更や市場の変化にあるのかを分けて確かめましょう。前提そのものが変わっていたのなら、目標を直すという判断も必要になります。期中に目標を変更するルールが制度にあるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
4.2. 部下が低すぎる目標や、高すぎる目標を出してくる
低すぎる目標は評価への不安から出てくることがありますし、高すぎる目標の背景には、上期の挽回を急ぐ気持ちがあるかもしれません。
どちらの場合も、上司が数字を直接書き換えるのは避けましょう。例えば「この数字を達成したとき、周りからは何が見えそうですか」と、ポイント4の問いに戻ってみてください。
基準を具体的に話すうちに、部下が難しさを自分で調整しやすくなるからです。上司が数字を書き換えてしまうと、目標は再び上司の言葉に戻ってしまいます。
4.3. 数字にしにくい仕事の目標
企画や管理の仕事、後輩の育成などで数字の目標を無理に作ると、測りやすいだけの指標が目標になりがちです。数字にしにくい仕事では、3.3で紹介した「達成したときの状態」と、中間で確かめる行動を組み合わせて書きましょう。
例えば、「後輩が定例会を一人で進行できている」という状態に、「次の回は前半だけ任せる」という中間の行動を添える場面を想像してみてください。中間の行動が決まっていれば、12月の確認日に、進み具合を具体的に話し合えます。
合意した目標の言葉が、期末の評価まで残っているでしょうか。TONOME Coreは、1on1の対話をAIが記録・要約し、前回決めたことを次回のアジェンダに自動でつなげます。上司には問いかけ方へのフィードバックが、部下には振り返りのきっかけが届きます。対話の内容を見られるのは当事者だけで、組織に届くのは実施率やテーマの傾向といった集計情報です。TONOME Coreの詳細を見る
5. 評価者ごとのばらつきを、組織としてそろえる方法
個々の上司の工夫だけで目標設定面談の質をそろえるのは難しいと感じるのは、ごく自然なことです。目標の質のばらつきを小さくするために、面談の中身を第三者が読む必要はありません。上司が自分の面談を振り返れる材料と、合意を残す仕組みを組織として用意すれば、ばらつきは小さくできます。
5.1. 面談ガイドに、書き方だけでなく聞き方を載せる
下期の面談ガイドに、記入例と並べて5つのポイントと聞き方の例を載せましょう。記入例は面談の結果をそろえ、聞き方は面談の進め方をそろえます。
聞き方が共通になると、部下が言い直した言葉と自分の意図のずれを上司どうしで話題にでき、面談のやり方を比べる機会が生まれます。例えば、チームの定例の場で「この聞き方だと、言い直しがうまくいった」という話が出る場面を想像してみてください。
5.2. 中間確認の日を、下期の最初に決めておく
中間確認を「必要があれば行う」としておくと、日々の忙しさに押されて、期末まで行われないことがあります。下期の面談の中で日付まで決め、カレンダーに入れておきましょう。
期中の目標変更のルールがある場合は、中間確認の日がその判断の場になります。例えば、12月の確認日が決まっていれば、「あの目標の進み具合はどうですか」と、構えずに声をかけられます。
5.3. 合意の記録を、上司の記憶から切り離す
面談で合意した言葉を、上司の手書きのメモや記憶に頼らず、当事者の二人が確認できる記録として残しましょう。期末の評価面談で「半年前に何に合意したか」を二人で確かめられれば、評価の説明は上司の記憶に左右されにくくなります。例えば、あなたと部下が同じ記録を開き、「この言葉で合意しましたね」と確かめられる場面を想像してみてください。
異動で上司が変わったときにも、新しい上司が合意の経緯を引き継げる点が利点です。評価の結果と理由を伝える面談については、評価フィードバック面談の進め方で詳しく紹介しています。
5.4. 面談の中身ではなく、実施と傾向を見る
面談の中身を第三者が読む設計にすると、上司も部下も、読まれる前提で言葉を選びやすくなります。合意の質を上げたいのに、肝心の本音が出にくくなってしまっては、逆効果です。
組織として把握するのは、面談の実施の有無や時間、多いテーマといった傾向で足ります。
| そろえたいもの | 方法 | 面談の中身を第三者が読む必要 |
|---|---|---|
| 面談の進め方 | 聞き方を載せた面談ガイド | なし |
| 目標を見直す時期 | 中間確認日を最初に決める | なし |
| 合意の内容 | 当事者が確認できる記録 | なし(当事者の二人で確認) |
| 面談の実施状況 | 実施率・時間・テーマの傾向 | なし(集計で把握) |
面談での問いの立て方をさらに知りたいときは、1on1の質問設計メソッドもあわせてご覧ください。
まとめ
下期の目標設定面談の進め方について、この記事の要点を3つに整理します。
● 下期の目標設定面談は、上期の事実から目標を直す面談であり、期初の面談の繰り返しではありません
● 目標の質が上司ごとにばらつくのは、面談の中身が見えず、やり方へのフィードバックも返らない構造があるからです
● 5つのポイントで期待を本人の言葉にし、合意の記録と中間確認の日を残すと、期末の評価で合意を確かめられます
半年後の評価会議で「この目標を、本人はどう理解していたか」に答えられる状態をつくることが、下期の面談の目的です。まずは下期の面談ガイドに5つのポイントと聞き方の例を加え、中間確認の日を面談の中で決めるところから始めてみましょう。

