上期の評価が確定し、評価フィードバック面談の準備を進める時期になりました。伝え方の注意点や例文を手引きにまとめて配っても、「なぜこの評価なのか分からなかった」という声が届くことがあります。手を尽くしたからこそ、あなたがもどかしさを覚えるのは無理もありません。
例えば、理由を聞かれた上司が、4月や5月の仕事ぶりを思い出せず、記憶に残った夏以降の印象で説明してしまう場面を想像してみてください。話し方の研修を足したくなりますが、原因は上司の話し方だけではありません。期中の事実を残す仕組みや、評価者どうしで基準をそろえる場、部下の理解を確かめる手順が整っていないと、説明のすべてを1回の面談が背負うことになります。
こんな場面に心当たりはありませんか。
● 面談のあとに「結果を告げられただけだった」と聞いて、返す言葉に詰まってしまった
● 評価者会議で調整された結果を、どう伝えればよいのか分からないまま面談の席に着いた
● 「分かりました」と言われて面談を終えたものの、本当に伝わったのか自信が持てない
この記事では、面談の中の5つの手順と例文に加えて、面談の前後に組織が用意できる仕組みを整理しました。評価者会議で話し合いたい議題や、面談のあとに部下の納得度を確かめる問いも載せています。10月の面談から期末まではおよそ半年あり、今回の面談から期中の事実を残し始めれば、期末の面談では半年分の出来事をもとに理由を話せます。
それでは詳しく見ていきましょう。
期末の評価の説明を、上司の記憶だけに頼っていませんか。TONOME Coreは、AIが1on1を支援するツールです。1on1の対話を自動で記録・要約するので、期中に話したことを上司と部下の二人があとから確かめられます。TONOME Coreの詳細を見る
1. 評価フィードバック面談とは?結果を伝え、次の期につなぐ場
面談の準備に追われていると、そもそも何のための場なのかを考える余裕は、なかなか持てないものです。評価フィードバック面談とは、上司が部下に評価の結果と理由を伝え、次の期に続けることと変えることを二人で確かめる面談です。呼び方は評価面談やフィードバック面談など会社によってさまざまで、4月始まりの会社なら、上期の結果を伝える面談は10月ごろになります。
1.1. 結果を通知する面談と、次の期につなぐ面談の違い
結果を知らせるだけなら評価シートを渡せば足りますが、面談の時間をとるのは、理由を部下が理解し、次の期の行動に結びつけるためです。
例えば、評価シートを読み上げて「何か質問はありますか」と聞いても返事がなく、気まずい沈黙のまま面談が終わる場面を想像してみてください。これは結果を通知する面談の形で、次の期につなぐ面談とは、話し始めから終わり方まで違っています。
| 観点 | 結果を通知する面談 | 次の期につなぐ面談 |
|---|---|---|
| 話し始め | 上司が評価の結果を読み上げる | 部下が上期を振り返る |
| 理由の根拠 | 上司の総合的な判断 | 期中の具体的な出来事と評価基準 |
| 部下の役割 | 聞いて受け止める | 振り返りを話し、理解したことを自分の言葉で言う |
| 終わり方 | 評価シートの確認で終わる | 次の期に続けることと変えることを決める |
手引きが言葉づかいの注意点だけを扱っていると、どれほど丁寧に話しても、面談は結果を通知する形のまま変わりません。言葉づかいに加えて、面談の流れそのものを手引きに載せておく必要があります。
1.2. 不満は、評価の結果だけでなく進め方にも向いている
不満というと、まず結果そのものを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、パーソル総合研究所の「人事評価と目標管理に関する定量調査」(2021年9月公表)では、不満は結果だけでなく進め方にも向いていました。
この調査は、従業員100人以上の企業で働く正規雇用者8,000人を対象にしたものです。自社の評価制度に不満を持つ人は38.3%で、評価のプロセスへの不満は36.3%と、結果への不満の33.2%をやや上回っています。
結果そのものは面談の場で変えられないことがほとんどですが、どの事実をどの基準に照らして判断したかは、面談で本人に示せます。
ただし、面談を行えば納得が高まるという因果を示した大規模なデータはありません。そのため、話し方に加えて、面談に持ち込む事実と面談のあとの確かめ方まで考える必要があります。
2. 人事評価の納得感が生まれない3つの理由
手引きを整え、言葉づかいにも気を配ったのに納得してもらえないと、やり方が間違っていたのかと落ち込んでしまうものです。けれども、納得感が生まれないのは、次の3つの理由が重なっているからで、あなたの準備が足りなかったからではありません。そのうち2つは、面談が始まる前にすでに決まっているものです。
2.1. 期中の事実が残っておらず、期末の説明が記憶頼みになる
半年前の仕事ぶりを、細かいところまで正確に思い出すのは簡単ではありません。期中の出来事が記録に残っていないと、期末の評価の説明は、どうしても記憶に頼ることになります。
記憶には直近の出来事ほど残りやすく、判断がその影響を受ける偏りは、評価者研修で期末誤差と呼ばれることがあります。さらに、同じ半年間を過ごしたはずの部下と上司で、覚えている出来事が違うこともあるでしょう。
例えば、部下は4月に立て直した案件を覚えていて、上司は9月の納期の遅れを覚えているとしたら、二人の話はかみ合うでしょうか。これでは、どれだけ丁寧に説明しても、理由は伝わりにくくなってしまいます。
前述の調査によると、上司による中間面談やフィードバックは多くの会社で制度化されています。ところが、制度どおりに実施できている上司は3割前後にとどまるという結果でした。中間面談が予定どおりに行われなければ、期中の事実を二人で確かめないまま期末を迎えてしまうかもしれません。
2.2. 評価者どうしの目線がそろわないまま、面談に臨んでいる
同じ評価基準を使っていても、その言葉の読み方は評価者ごとに違うことがあります。例えば、担当の仕事を期限内に終えることを「期待どおり」と読む課長もいれば、周りへの働きかけまで含めて読む課長もいます。
同期や隣の課の同僚の評価と比べながら、自分の結果を聞く部下もいるでしょう。読み方の違いが話し合われないままだと、「隣の課なら違う評価だったはず」という受け止めを、上司は面談で打ち消せません。
評価者会議で一次評価が調整されたときは、説明がさらに難しくなります。変えた理由が一次評価者に共有されないと、その上司は面談で「上で決まったことだから」としか言えません。部下の側は、誰がどんな理由で決めたのかを知らないまま、面談を終えることになります。
2.3. 面談が一方通行で、伝わったかを確かめる手順がない
手引きは、上司が何をどう伝えるかを中心に書かれていることが多いものです。部下が何を理解し、どこに引っかかったかを確かめる手順までは載っていないこともあります。
部下が「分かりました」と答えれば面談は終わりますが、その一言の裏に、飲み込んだ疑問が隠れているかもしれません。
制度を運用する側の手元に届くのは、面談を実施したという記録だけです。伝わらなかったという不満を初めて目にするのは、数か月後のサーベイの自由記述かもしれません。
面談のあとに届く声と、その背景にある理由、変えられることを並べると次のようになります。
| 面談のあとに届く声 | 背景にある理由 | 変えられること |
|---|---|---|
| 「なぜこの評価なのか分からない」 | 期中の事実が残っていない(2.1) | 期中の出来事を3つ書き出して面談に持ち込む |
| 「隣の課なら違う評価だったはず」 | 評価者の目線がそろっていない(2.2) | 評価者会議で、理由の言葉をそろえる |
| 「結果を告げられただけだった」 | 面談が一方通行になっている(2.3) | 部下の振り返りから始め、最後に本人の言葉で確かめる |
| 「評価面談は意味がない」 | 面談のあと、次の期に何も変わらない(2.3) | 次の期に続けることと変えることを決め、記録に残す |
3. 評価フィードバック面談の進め方|5つの手順と例文
限られた時間の中で、理由も次の期待も伝えなければならず、何から話せばよいか迷ってしまうのは自然なことです。評価フィードバック面談は、部下の振り返りから始めて部下自身の言葉で確かめて終える、5つの手順で進めてみてはいかがでしょうか。
- 部下に、上期の振り返りを先に話してもらう
- 期中の事実を、二人で並べて確かめる
- 評価の理由を、事実と基準をつないで伝える
- 次の期に期待することを、一つか二つに絞って伝える
- 理解したことを部下の言葉で話してもらい、記録に残す
振り返りと事実を先に置くのは、二人の見ている出来事が同じかを、評価の話に入る前に確かめるためです。ただし、結果を伏せたまま振り返りを求めると、結果が気になって話に集中しにくい部下もいます。結果が事前に通知されていなければ、冒頭で一言だけ伝え、理由は手順3に回しましょう。
3.1. 面談の前に、期中の事実のメモを用意する
面談の前に、評価に関わる期中の出来事を3つほど書き出しておきましょう。整理には、フィードバックの型として知られるSBI(状況・行動・影響)が使えます。
SBIは、状況(Situation)・行動(Behavior)・影響(Impact)の頭文字です。提唱したのは米国のCenter for Creative Leadershipです。Sloan Weitzelの『Feedback That Works』(2000年)で体系化されました。
例えば「7月のシステム切り替えでマニュアルを自分で書き直し、問い合わせが減った」のように、状況と行動と影響を一文にまとめます。事実の出どころは、1on1のメモや週報、案件の記録など手元にあるもので十分です。
会議で評価が変わった部下については、変わった理由もメモに加えておきます。面談の席で理由を聞かれたとき、あなたの言葉で答えられる材料になるからです。
3.2. 振り返りと事実から始める(手順1・2)
手順1では、理由を語る前に、部下に上期を振り返ってもらいます。問いは「上期の仕事のうち、自分ならどれをいちばん評価しますか」のように、自分の仕事を評価者の目で見直せる形にしましょう。
手順2では、部下が挙げた出来事と、用意したメモの出来事を並べます。部下が挙げなかった出来事で評価に関わるものがあれば、この場で出しておくと、あとの話がかみ合いやすくなります。
事実の段階で受け止め方が違うなら、結論の話に進む前に、そのずれを先に話し合ってください。理由で意見が分かれるより、事実の段階で分かれるほうが、二人とも話を戻しやすいからです。
3.3. 理由と期待を伝え、部下の言葉で確かめる(手順3〜5)
手順3では、評価基準のどの項目にどの事実が当たるかという形で理由を伝えます。「総合的に判断して」と言われても、次に何を変えればよいか分からなくなってしまう部下もいます。
手順4で伝える期待は、あれもこれもと広げずに、一つか二つに絞りましょう。下期の目標の決め方は、目標設定面談の進め方とコツで詳しく紹介しています。
手順5では、次の期に続けることと変えることを、部下自身の言葉で話してもらうことが大切です。その言葉が上司の意図と違っていれば、面談の残り時間で話し直せます。
翌営業日までに話した内容を短くまとめ、部下に確認してもらうところまでを面談の一部と考えてください。手順ごとに、避けたい言い方と伝え方の例を並べると次の表のとおりです。
| 手順 | 避けたい言い方 | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 1. 振り返り | 「評価はシートのとおりです。何か質問はありますか」 | 「上期の仕事のうち、自分ならどれをいちばん評価しますか」 |
| 2. 事実 | 「全体的によく頑張っていたと思います」 | 「6月に納期の変更を先方と調整してくれた件から確かめさせてください」 |
| 3. 評価の理由 | 「総合的に判断して、この評価になりました」 | 「7月の引き継ぎの件は、基準の『周りを巻き込む』で期待を上回っていました」 |
| 4. 次の期待 | 「下期はもっと主体的に動いてください」 | 「下期は、新規の提案書を一人で組み立てるところまでを期待しています」 |
| 5. 確かめる | 「何か分からないことはありますか」 | 「今日の話から、下期に続けることと変えることを一つずつ聞かせてください」 |
4. 期待に届かなかった評価の伝え方と例文
期待に届かなかったことを伝える面談は、気が重いものです。相手の表情が曇るのを見たくなくて、つい言葉を和らげたくなる気持ちも分かります。
それでも、期待に届かなかった評価は、人柄ではなく行動と基準について伝え、次の期に何が変われば評価が変わるかまで示しましょう。理由がぼやけるほど、何を変えればよいかが見えなくなってしまうからです。
4.1. 行動と基準で話し、人柄や意欲の話にしない
期待に届かなかった理由を「意欲が足りない」「責任感が弱い」と伝えると、自分そのものを否定されたと受け止める人もいます。もしあなたが「責任感が弱い」と告げられたら、どの行動を直せばよいのか、見当がつくでしょうか。
行動なら次の期に変えられますが、人柄を変えるよう求められても、何をすればよいかは分かりません。期限を過ぎた仕事、手を挙げなかった場面のように、基準の項目に当たる行動を挙げて話しましょう。
4.2. 評価者会議で評価が変わったときも、理由を自分の言葉で伝える
会議で評価が下がった場合、「上で決まったことだから」と説明してしまうと、部下は理由を知る機会を失います。例えば、あなたが部下から「なぜ下がったのですか」と聞かれ、会議の中身を知らないために言葉に詰まる場面を想像してみてください。
会議で何を比べ、どの項目で差がついたのかを確かめ、自分の言葉で伝えてください。理由が分からないときは、面談の前に事務局へ問い合わせておくと安心です。
4.3. 反論や沈黙が返ってきたら、その場で結論を急がない
部下が反論してきたときは、どの事実の受け止め方が違うのかを先に聞いてみてください。認識が違うなら、その場で決着をつけずに、確かめてから改めて話す日を決めます。
例えば、結果を伝えた直後に部下がうつむいて黙り込み、次の言葉が見つからなくなることもあるでしょう。そんなときも、その場で納得の言葉を引き出そうとはせず、数日後に短く話す時間をとるのも一つの方法です。
評価の結果は変えられなくても、どこに引っかかったのかを聞くことはできます。場面ごとの言い方の例を、次の表にまとめました。
| 場面 | 避けたい言い方 | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 届かなかったことを伝える | 「今期は残念な結果でした」 | 「基準の『期限内に仕上げる』は、9月の2件で期限を過ぎたため、期待に届いていません」 |
| 姿勢に触れたくなる | 「もう少しやる気を見せてほしい」 | 「会議での発言が少なかった点が気になっています。理由があれば聞かせてください」 |
| 評価者会議で評価が変わった | 「上で決まったことなので」 | 「他の課と基準をそろえた結果です。差がついたのは『改善を提案する』の項目です」 |
| 次の期につなぐ | 「下期は挽回してください」 | 「この項目が期待どおりになれば、評価にも表れます。月に一度、進み具合を確かめましょう」 |
期待に届かなかった理由を、半年前の出来事で説明できるでしょうか。TONOME Coreは、1on1の対話をAIが記録・要約し、前回の宿題を次回のアジェンダに自動でつなげます。期中の取り組みが回ごとに残り、内容を見られるのは上司と部下の当事者だけです。AIは評価も代行もしません。評価の根拠を日々の対話から積み上げる活用例は、印象評価から、データにもとづく評価へをご覧ください。
5. 評価の納得感を組織として高める仕組み
面談を評価者一人ひとりの努力に任せきりにしていると、頑張る人ほど負担が重くなってしまうことがあります。納得感を上司一人ひとりの話し方に任せず、期中の記録と評価者会議、面談後の確認を組織として用意しましょう。いずれも、対話の中身を第三者が読まずに回せる仕組みです。
5.1. 期中の事実を、1on1のたびに短く残す
期末にまとめて思い出そうとせず、1on1のたびにその月の仕事の出来事を一つか二つ残しておきましょう。上司と部下が同じ記録を見返せれば、期末に「言った・言わない」のずれが起きにくくなります。
ただし、記録を資料として第三者が読む形にすると、話す内容を選ぶようになる部下もいます。見返すのは当事者の二人に限り、12月か1月には二人で記録を読み返す中間の確認を入れておきましょう。
5.2. 評価者会議で、評価の理由の言葉をそろえる
評価者会議では、分布を合わせるだけでなく、理由を面談で説明できる言葉にそろえましょう。事務局が進める場合は、次の5つの議題で組むと、面談の準備まで一度に済みます。
| 順番 | 議題 | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 評価基準の読み合わせ | 「期待どおり」と「期待を上回る」の境目を、具体的な行動の例で確かめる |
| 2 | 迷った事例の持ち寄り | 迷った事例を一つずつ出し、どの事実をどの項目に当てたかを話す |
| 3 | 評価の分布の確認 | 部署ごとの偏りを見て、偏りがあればその理由を聞く |
| 4 | 調整した理由の記録 | 評価を変えた場合、一次評価者が部下に説明できる言葉で理由を残す |
| 5 | 面談での伝え方の確認 | 期待に届かなかった評価の伝え方を、例文で確かめる |
会議がすでに終わっていても、議題4と5だけを話し合う場なら、10月の面談の前に設けられます。
5.3. 面談のあとに、納得度を部下に確かめる
面談から2週間以内に、部下に短い問いで納得度を確かめましょう。問いは、評価の結果に満足したかではなく、面談の進め方が伝わるものだったかを聞く形にします。たとえば、次の4つの問いが使えます。
● 評価の理由は、上期の具体的な出来事と結びつけて説明されましたか
● 評価を聞く前に、自分の振り返りを話す時間はありましたか
● 下期に続けることと変えることを、自分の言葉で言えますか
● 評価について、あとから相談できる相手はいますか
回答は無記名にし、回答者が少ない単位では集計を出さないようにしましょう。結果は上司の評価に使わず、どの手順が抜けやすいかを次の評価者会議で話し合うために使います。
部署ごとの傾向を見れば、面談の中身を読まずに、上司による面談の差をつかめます。各上司には自分の部署の結果を返し、あなたの会社の面談を少しずつ整えていきましょう。
まとめ
最後に、ここまでの内容を、この記事の要点として3つに整理します。
● 評価フィードバック面談は、理由を部下が理解し、次の期に続けることと変えることを二人で決める場
● 納得感が生まれにくい背景には、期中の事実の不足、評価者の目線のずれ、一方通行の面談という3つの理由がある
● 面談は部下の振り返りから始めて部下の言葉で確かめ、期中の記録と評価者会議、面談後の確認を組織として用意する
期末の面談で「なぜこの評価なのか」に半年分の事実で答えられるかは、これからの半年に何を残すかで変わります。まずは今回の面談の手引きに5つの手順と例文の表を加え、面談から2週間以内に4つの問いで部下の受け止めを確かめるところから始めてみましょう。

