月末の締めが近づくと、予定表から真っ先に消えてしまうのは1on1かもしれません。「今週は締めがあるので来週に」と二度ずらすうちに、1on1は意味ないのではと感じるのも無理はありません。

忙しい時期に1on1が後回しになってしまうのは、決してあなたの意識が低いからではありません。研修やサーベイと何が違うのかが言葉になっていないと、期限のある仕事と並んだときに、守る理由を示せないからです。

こんな場面に心当たりはありませんか。

● 「来週にしましょう」とずらした日程が、決まらないまま月をまたいでしまう

● 久しぶりの面談で何から話せばよいか分からず、案件の進み具合の確認で30分が過ぎる

● 「研修もサーベイもあるのに、なぜ1on1も必要なのか」と聞かれて、答えに詰まった

この記事では、研修やサーベイと同じ物差しで1on1を比べ、対話にしかない役割を整理します。そのうえで、対話の弱点への手当てと、忙しい時期でも続けられる15分の型を紹介します。

それでは詳しく見ていきましょう。

1on1の準備と記録に手間がかかり、忙しい月ほど後回しになっていませんか。TONOME Coreは、AIが1on1を支援するツールです。対話を自動で記録・要約し、前回の宿題をふまえて次回の話題をAIが提案します。TONOME Coreの詳細を見る

1. 1on1とは?目的と、ほかの面談との違い

「そもそも1on1は、何のための時間だったのだろう」と、ふと立ち止まったことはありませんか。評価面談や定例の打ち合わせと並べてみると、違いを言葉にしにくいと感じるのも自然なことです。

1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に話し、部下の仕事や成長と困りごとを扱う対話の時間です。話の中心は部下で、上司が指示を出したり報告を受けたりする場とは目的が違います。

何のための時間かを決めないまま始めると、ほかの面談や打ち合わせと区別がつかなくなってしまうでしょう。まずは目的と、評価面談や業務の打ち合わせとの違いを、順に整理しておきましょう。

1.1. 1on1の目的は、一人の状況を知り、その場で働きかけること

目的は、部下一人ひとりの状況を知り、その場で働きかけることにあります。ここでいう状況とは、仕事の進み具合だけでなく、本人が迷っていることや試したいことまで含めたものです。

働きかけも、助言だけを指すわけではなく、仕事の任せ方を変える、詳しい人につなぐ、次に試すことを一緒に決めるといった動きも含みます。

たとえば、部下が「資料づくりは順調です」と答えたとして、その言葉の裏に、誰にも聞けないまま止まっている作業があるかもしれません。一人の状況を知るとは、進み具合の報告だけでなく、こうした言葉の裏にある事情まで知ることです。

目的を「部下の成長支援」とだけ書いておくと、忙しい時期に守る理由としては弱く見えることがあります。誰に何をするための時間かまで言葉にしておけば、締めの仕事と並べたときにも説明がつきます。

1.2. 評価面談や業務の打ち合わせとは、話の中心が違う

評価面談は、期の終わりなどに評価の結果と理由を伝える場で、話の中心は上司の判断です。業務の打ち合わせは案件を前に進める場なので、話は案件の進み具合が中心になります。

一方で対話の場では、部下の話が中心になり、評価も案件も話題の一つとして扱います。席に着いたとたん「で、あの案件はどうなってる?」と切り出し、30分が進み具合の確認だけで終わる場面を想像してみてください。

進み具合の確認だけで終われば、中身は打ち合わせと変わらず、わざわざ時間を取る理由が見えなくなります。こうした状態は、形骸化とも呼ばれます。

あなたが「意味ない」と感じているのは、じつは打ち合わせと変わらなくなった1on1のほうなのかもしれません。

2. 1on1が「意味ない」と感じられる3つの理由

「意味ない」と感じてしまうのは、あなたや部下の努力が足りないからだけではなく、この時間の置かれ方にも理由があるからです。その理由は、目的が言葉になっていない、忙しいと最初に削られる、効果が見えにくいという3つに分けられます。

2.1. 何のための時間かが、言葉になっていない

運用を始めるときに目的を決めていても、現場に届くのは「月に1回、30分話す」という形だけのことがあります。目的が上司自身の言葉になっていなければ、何を話せばよいか迷うこともあるでしょう。

たとえば、席に着いた部下から「今日は何を話せばいいですか」と聞かれて、言葉に詰まったとします。目的が言葉になっていなければ、答えに迷うのは自然なことです。

部下の側も、何のために呼ばれたのか分からないまま席に着き、話題が見つからないまま進み具合の確認に流れていくことがあります。こうして中身が打ち合わせに近づくほど、研修やサーベイとの違いを問われたときに、答えにくくなっていきます。

2.2. 忙しい時期に、最初に削られる予定になっている

この時間は期限のある仕事と同じ予定表に並びますが、顧客との約束や社内の締めと違い、延ばしてもその日に困る人はいません。そのため忙しい時期にはまず後ろへ回り、「来週にしましょう」が二度、三度と続いて、日程が決まらないまま月が変わることもあります。

パーソル総合研究所の「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」は、2025年2月に公表されました。対象は正社員3,000名のネット調査で、困りごととして「多忙で日程設定が難しい」を選んだ上司は、35.3%でした。

部下でも、26.3%が「上司が多忙で日程設定が難しい」を選んでおり、実施頻度は同じ調査で平均月0.8回でした。直近半年に1on1を経験した部下は55.7%で、以前はあったが今はないという人も26.9%いました。延期が重なると、やめると決めた人がいなくても、そのまま止まってしまうことがあります。

2.3. 効果が見えにくく、続ける理由を示せない

効果は、売上や離職率のような結果の数字にはすぐに表れないため、続ける理由を示しにくいものです。同じ調査で「効果が感じられない」を選んだ人は、部下で29.7%、上司で27.6%でした。

これは困りごととして選ばれた割合で、不要と考える人の割合とは違います。ただ、1on1が離職やエンゲージメントを改善するという因果を示した国内のデータは、見当たりません。

「続けて、何が変わったのですか」とあなたが問われても、結果の数字ではすぐに答えられない。そんな場面を想像してみてください。

効果を結果の数字だけで示そうとすると、続ける理由がいつまでも示せないまま、予定表の端へ追いやられてしまいます。目的が言葉にならず、効果も示せない予定は、忙しさの前でいちばん弱い立場に置かれます。

3. 研修・サーベイと比べてわかる1on1の必要性

「研修もサーベイもやっているのに」と言われると、価値は説明しにくく感じられるものです。しかし、研修やサーベイと同じ物差しで比べてみると、対話にしかない役割が少しずつ見えてきます。

研修やサーベイは、対話の代わりでも競争相手でもなく、得意なこと、苦手なこと、向いている課題がそれぞれ違うだけです。

3.1. 組織の課題への打ち手は、大きく3つに分けられる

組織の課題への打ち手は、一律の施策と把握の施策、一人ひとりとの対話の3つに分けられます。一律の施策は研修や制度のように全員へ同じものを届ける打ち手で、把握の施策はサーベイやデータで状態を知る打ち手です。

3つを並べると、次のようになります。

打ち手 例 得意なこと 苦手なこと 向いている課題
一律の施策 研修・制度・処遇 全体の平均を動かす。社内で説明しやすい 特定の一人には届きにくい 全員に同じ知識や基準が必要な課題
把握の施策 サーベイ・人事データ 問題に気づく。部署ごとの差を比べる 気づいた後、特定の一人へ働きかける手段が別に要る どこで何が起きているかを知りたい課題
一人ひとりとの対話 1on1・日々の相談 特定の一人に届く。状況を知りながら働きかけられる 時間がかかる。質が上司に左右され、効果が見えにくい 人によって原因や打ち手が違う課題

この表は、どの打ち手が優れているかを決めるためのものではなく、場面に合う道具を選ぶための整理です。新しい評価基準を全員に伝えるなら研修が向いていますし、部署ごとの差を知るならサーベイが向いています。

対話が向いているのは、同じ課題に見えても、原因や必要な働きかけが人によって違うときです。たとえば、仕事が伸び悩んでいる部下が二人いて、一人は仕事量が原因、もう一人は任された範囲が分からず手が止まっていた、ということもあります。

3.2. 知ることと働きかけることを、同じ場でできるのは対話だけ

3つの打ち手のうち、一人の状況を知ることと、その人に働きかけることを同じ場で同時にできるのは対話だけです。サーベイで問題に気づいても、特定の一人へ働きかけるには別の手段が要ります。

研修は全員に同じ知識を届けられますが、学んだことを一人ひとりの仕事にどう当てはめるかまでは扱いにくいでしょう。一方で対話なら、相手の話を聞きながら、その場で次の一手まで一緒に決められます。

たとえば部下が、新しい担当先で何から手をつければよいか迷っていると話したとしましょう。どこで迷っているかを聞き、優先順位を一緒に決めたり、担当先をよく知る先輩につないだりできます。知ってから動くまでのあいだに、報告や会議を挟む必要はありません。

3.3. 研修やサーベイが届かない部分を、1on1が引き受ける

1on1が役に立つのは、研修やサーベイでは届かない、一人ひとりの事情を扱うときです。サーベイで部署のスコアが下がったと分かっても、誰が何に困っているかは集計からは見えません。

研修で学んだことも、本人の仕事に当てはめる段階で、その人なりの迷いが出てくるものです。全体を動かすのは研修や制度、傾向に気づくのはサーベイ、一人ひとりに届けるのは1on1という分担です。

周囲から必要性を問われたときは、この分担を使って答えてみてはいかがでしょうか。たとえば「1on1を止めると、サーベイで気づいたことを一人ひとりとの話につなげる場がなくなります」と説明できます。

4. 1on1の弱点と、その手当て

1on1を続けても手応えがないと、「自分のやり方が悪いのでは」と思い悩んでしまうものです。ただ、対話にはもともと、ほかの打ち手にない弱点が4つあり、手当てとあわせて表にまとめました。

弱点 起きやすいこと 手当て
質が上司に左右される 同じ制度でも、課によって中身が違う 共通の型を決め、上司が自分の1on1を振り返れるようにする
時間がかかる 繁忙期に最初に削られる 1回の長さを変えられるようにし、準備と記録の手間を減らす
効果が見えにくい 続ける理由を説明できない 結果の数字の手前で、続いているかと前回からのつながりを見る
話したくない部下もいる 当たりさわりのない話で終わる 話題を部下が選べるようにし、話さない選択も認める

4.1. 質が上司に左右される

「うまく聞けているだろうか」と、あなたが不安になるのは自然なことで、対話の中身は、上司の聞き方と準備によって大きく変わります。

リクルートマネジメントソリューションズの「1on1ミーティング導入の実態調査」は、2022年4月に公表されました。人事担当の正社員936名に導入企業の課題を聞いており、「上司の面談スキル不足」が47.2%、「上司の負荷の高まり」が44.6%でした。

ただし回答したのは人事担当の社員であり、上司本人の声ではない点には注意が必要です。先のパーソル総合研究所の調査でも、困りごとに「学ぶ仕組みがない」を選んだ上司は35.4%いました。

上司による差は、1on1に限った話ではありません。米国のGallupは、チームのエンゲージメントのばらつきの少なくとも約7割が、マネジャーによって説明されると推計しています。

これは米国中心のデータで、チームのあいだのスコアの差について推計した数字です。上司の関わり方で職場の状態に差が出るなら、上司が学べる仕組みを1on1の運用に組み込むことが手当てになるでしょう。共通の型を決めて進め方をそろえ、上司が自分の1on1を振り返る機会をつくりましょう。

4.2. 時間がかかる

対話は部下の人数の分だけ時間がかかり、たとえば部下が8人いて月に1回30分ずつ話すなら、それだけで月に4時間です。準備と記録の時間は、これとは別にかかります。

時間がないと感じるときは、まず1回の長さと準備の手間を見直しましょう。前回決めたことを一行でメモしておき、始める前に見返すだけでも、準備の時間は短くできます。1回の長さの決め方と、短い回の進め方は、5章で詳しく紹介します。

4.3. 効果が見えにくい

結果の数字で効果を示すのは難しいので、その手前で確かめられることから見ていきましょう。予定どおり続いているか、前回決めたことが次の回までに進んだか、部下が役に立った場面を挙げられるかの3つです。

どれも予定表や手元のメモ、部下への短い質問で確かめられ、特別な仕組みは要りません。たとえば前回決めた提案書の構成の見直しが、次の回までに進んでいれば、それも確かな手応えの一つです。指標の選び方や測る時期は、1on1の効果測定の方法で詳しく紹介しています。

4.4. 話したくない部下もいる

話すことに気が進まない部下もいて、その理由は、上司との関係や話すことへの慣れ、仕事の状況など人によって違うものです。話を無理に引き出そうとすると、この場は部下にとって負担の大きい時間になってしまいます。

話題は部下が選べるようにし、個人的な話をしない選択も認めましょう。たとえば「今日は仕事の話だけにしたいです」と言われたら、その選び方を受け止めてかまいません。その場合も進み具合の確認で終わらせず、その仕事で何に迷っているかを聞いてみてください。

久しぶりの1on1を、前回何を話したかを思い出すところから始めていませんか。TONOME Coreは、1on1の対話をAIが自動で記録・要約し、要点と次にやることを整理します。前回の宿題は次回のアジェンダに自動でつながるので、準備と記録にかかる時間を減らせます。上司には、問いかけ方へのAIのフィードバックも届きます。対話の内容を見られるのは当事者だけです。TONOME Coreの詳細を見る

5. 忙しくても1on1を続ける方法

忙しいさなかに「この時間をどう守ろう」と考えるのは、骨が折れることです。だからこそ、繁忙期に入る前に、守る時間の置き方と、時間がない回の15分の型、延期のルールの3つを決めておきましょう。なぜなら、忙しくなってからでは、1on1の枠はもう予定表に残っていないからです。

5.1. 守る時間を、繁忙期を避けて先に置く

1on1の枠は、月末の締めや期末のように毎回忙しくなる時期を避けて置きましょう。たとえば月末に締めがある職場なら、月の前半に枠を固定するだけで、締めとの重なりを減らせます。

枠は次の繁忙期を越えるところまで先に予定表へ入れておき、時間が取れないときは、取りやめるより短くするほうを選びましょう。間隔があかなければ、15分でも前回の続きから話せます。

上司の時間の使い方から見直したいときは、プレイングマネージャーの限界もあわせてご覧ください。

5.2. 時間がない回のための、15分の最小の型

時間がない回は、次の5つの手順で進めれば、15分でも話の中心を部下に置いたまま終えられます。

  1. 前回決めたことが進んだかを、部下に聞く(2分)
  2. 「今日、一つだけ話すなら何ですか」と聞く(1分)
  3. その話を、部下の言葉で最後まで聞く(7分)
  4. 次にやることを一つだけ決める(3分)
  5. 次の1on1の日時を、その場で確かめる(2分)

この型の中心は、話題を一つに絞ることです。「今日、一つだけ話すなら何ですか」と聞かれた部下が、少し考えて「実は、来週の提案の進め方が気になっていて」と話し出す場面を想像してみてください。

30分の1on1をそのまま15分に詰めると、上司が確かめたいことが先に来がちで、その分、部下が話す時間は残りにくいものです。話題を部下に先に選んでもらえば、短い時間でも部下の話が中心になります。

手順1で前回を受け取り、手順4で次回へ渡すことで、対話が一本の線としてつながっていくのです。毎回が前の回とつながっていれば、久しぶりに開いた1on1で話すことが見つからないという状態は起きにくくなります。

5.3. 延期のルールを先に決めておく

延期はどの職場でも起きるので、延期した回が日時の決まらないまま消えてしまわないよう、たとえば次のようなルールを決めておきましょう。

起きたこと ルール
予定の日に時間が取れない 延期を伝えるときに、同じ週か翌週の日時を決め直す
2回続けて延期した 次の回は15分の型で必ず開く
部下から延期したいと言われた 理由は深く聞かず、次の日時だけを決める
延期が多い月があった 重なった仕事を書き出し、翌月の枠の置き方を見直す

延期の記録は、誰が守れなかったかを確かめるためには使わないようにしましょう。見るのは、どんな仕事と重なったときに1on1が後ろに回ったかです。

重なりやすい仕事が分かれば、次の繁忙期の前に枠の置き方を変えられるはずです。あなた一人で完璧に守ろうとせず、ルールに任せる部分をつくっておくと、気持ちも少し楽になります。

まとめ

「意味ないのでは」と迷ったときに立ち返れるよう、ここまでの内容を3つに整理します。

● 1on1は、部下一人の状況を知ることと働きかけることを同じ場でできる時間で、研修やサーベイが届かない一人ひとりを受け持つ

● 「意味ない」と感じられるのは、目的が言葉になっていない、忙しいと最初に削られる、効果が見えにくいという置かれ方にも原因がある

● 対話の弱点には手当てがあり、守る時間と15分の型、延期のルールを繁忙期の前に決めておけば、忙しい時期にも続けやすくなる

「1on1は意味ないのでは」と迷ったときは、研修とサーベイが全体を受け持ち、1on1が一人ひとりを受け持つという分担で考えてみてください。まずは次の繁忙期に入る前に、枠を予定表へ入れ、15分の型と延期のルールを職場で共有するところから始めてみましょう。