2年目社員に期待することは、あなたの頭の中にはあっても、あらためて言葉にする機会はなかなかありません。OJT(職場内訓練)の期間が終わり、来春の新人の受け入れに目が向き始める時期なら、それも無理のないことです。

2年目は、期待が上がる一方で、その期待が言葉にされないまま支えが薄くなりやすい時期です。つまずきの原因は、本人の気持ちだけではなく、1年目と2年目のあいだにある仕組みの切れ目にもあると考えられます。

こんな場面に心当たりはありませんか。

● 1年目には決まった日に開いていた1on1が、気づけば「何かあったら言って」に置きかわっている

● 任せた仕事が思うように進まないとき、そもそも何を期待していたのかを言葉にできていない

● 伸び悩みや「辞めたい」という相談を受けて、本人の意欲に理由を探してしまう

この記事では、「2年目の壁」が生まれる3つの理由と、期待を書き分ける表、2年目の1on1の質問例、OJT担当から上司への引き継ぎ項目を紹介します。来春に後輩が入ると、本人も上司も目が後輩に向きやすくなるため、それまでの半年が、1年目と2年目の切れ目をつなぎ直す時期です。

それでは詳しく見ていきましょう。

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1. 2年目社員に期待することは、1年目と何が変わるのか

あなたも「そろそろ一人でできるはず」と考えることがあるかもしれません。ただ、2年目社員に期待することが増えるとき、支えの形も同時に変わっていることには、気づきにくいものです。

2年目社員の育成とは、1年目の手厚い支えが終わったあとに、任された仕事を自分で考えて進められるように支えることです。1年目には、新人研修とOJT、入社半年のフォローアップ面談といった決まった型があります。2年目向けの研修を設ける会社はあっても、日々の仕事で誰がどう支えるかは決まっていないことがあります。

1.1. 1年目は教わる場面が中心、2年目は任される場面が増える

1年目と2年目のいちばんの違いは、仕事を教わる場面が中心の時期から、任される場面が増える時期へ変わることです。1年目は隣にOJT担当がいて、手順を一つずつ教わりながら仕事を覚えていきます。

例えば、1年目は何でも隣のOJT担当に確認できたのに、2年目の今は、確認するかどうかも自分で決めなければならない場面を想像してみてください。同じ仕事を一人で任され、段取りや判断も自分で考えるよう求められる場面が増えていく中で、支えの形も次のように変わります。

観点 1年目 2年目
身近な相談相手 隣にOJT担当がいる 決まった相手がいないことがある
上司との1on1 間隔を決めて開くことが多い 「何かあったら」の随時になりやすい
期待の伝わり方 覚えることの一覧がある 「そろそろ一人で」のような言い方になる
振り返りの場 フォローアップ研修や面談がある 期末の評価面談だけになりやすい

任される仕事は増えるのに、支えと期待を伝える場はそろって減りやすくなります。2年目社員に期待することが本人に見えにくくなるのは、この二つが同時に起きるからです。

1.2. 大卒では、2年目も1年目とほぼ同じ割合で離職している

「1年目を乗り切れば、ひと安心」と思いたくなるものですが、大卒では就職後2年目にも1年目とほぼ同じ割合の人が離職しています。

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」(2025年10月公表)で、2022年3月に卒業して就職した人の離職率を見ると次のとおりです。

卒業区分 3年以内の合計 1年目 2年目 3年目
大卒 33.8% 12.1% 11.9% 9.9%
高卒 37.9% 17.9% 11.5% 8.5%

数字はどれも、同じ年に就職した人のうち、その年次に辞めた人の割合です。大卒については、1年目を越えれば離職がはっきり減るとは言えません。ただし、この統計から辞めた理由までは分かりません。

2. 「2年目の壁」が生まれる3つの理由

「少し行き詰まっていて」と話されたり、「辞めたい」と切り出されたりすると、驚くと同時に、自分の関わり方まで振り返ってしまうものです。

2年目の壁とは、仕事に慣れてきた頃に、手応えを見失ったり辞めたいと考え始めたりすることを指す言い方です。この壁は、支えの急な減少と言葉にされない期待、引き継がれない1年目の振り返りの3つが重なって生まれやすくなります。

ALL DIFFERENT(旧ラーニングエージェンシー)は2022年10月、「若手社員の意識調査(2〜4年目の直面する壁TOP3編)」を公表しました。入社2〜4年目の社員に、年次ごとに300名ずつ聞いたネット調査です。

2年目の回答では、「仕事を進める上で困難を感じることがある」が68.3%、「仕事量が多い」が50.7%でした。「仕事に飽きた・つまらない」も49.3%にのぼります。2022年の調査で2年目の回答者は300名なので、すべての2年目に当てはまる数字ではありません。

2.1. 支えが、OJTの終わりとともに一度に薄くなる

2年目の支えは、少しずつ減るのではなく、OJTの終わりを境に一度に薄くなることがあります。OJT担当の役目が終わり、フォローアップ面談も1年目で一区切りです。

上司との1on1も、新人の期間が過ぎたことを理由に間隔が空きがちです。昨日まで隣にいた相談相手が急にいなくなったように感じる人もいます。

先に挙げた調査の特別編では、離職意向のある2年目は、ない2年目より「相談相手がいない」と答えた割合が11.0ポイント高くなっていました。これだけで相談相手の有無が離職の原因だとは言えませんが、2年目に入る前に相談できる相手を決めておく理由にはなります。

2.2. 期待が上がっても、言葉にされない

2年目社員に期待することが上司の頭の中にあっても、伝わるのは「そろそろ一人で回してほしい」といった言い方くらいかもしれません。

例えば、一人で回すとは段取りのことなのか判断のことなのか、そこが言葉にされないままだと、何をどこまでやればよいのか迷う人もいます。

若手の離職については、リクルートマネジメントソリューションズの「若手の離職実態調査2026」(2026年6月公表)があります。対象は、社会人1〜3年目の大卒・大学院卒の正社員など968名です。

在職している人の62.2%が、会社を辞めたいと思ったことがあると答えています。辞めたい理由の上位には「仕事にやりがいや意義を感じない」(21.8%)が挙がりました。「給与水準」(19.5%)と「やりたい仕事ができない」(14.1%)が続きます。

数字は1〜3年目を合わせたもので、2年目だけのものではありません。辞めたいと思ったことがあるという回答も、辞めるつもりの強さまでは表していません。

やりがいや意義は、周りが与えられるものではないかもしれません。ただ、任された仕事が何につながり、どこまで期待されているのかを伝えることなら上司にもできます。

2.3. 1年目の振り返りが、2年目の上司に引き継がれない

1年目に本人をいちばん近くで見ていたOJT担当の見立ては、2年目の上司との会話にほとんど出てこないことがあります。OJT担当なら、本人が一人でできるようになった仕事や、つまずいた場面を知っているはずです。

入社半年や1年の面談で本人が話した希望も、OJT担当の記憶や振り返りのシートに残ったまま使われなくなりがちです。入社半年の面談で確かめておきたいことは、新入社員のフォローアップ面談で紹介しています。

さらに2年目に異動や配置換えがあれば、本人は新しい上司に一から自分のことを話さなければなりません。1年かけて積み重ねた手応えや希望を、また最初から説明する場面を想像してみてください。

3. 2年目社員に期待することを、項目に分けて言葉にする

期待していることがあっても、それを一つずつ言葉にするのは意外と難しいものです。2年目社員に期待することは、「一人前に」のようなひとことでまとめず、仕事の領域ごとに1年目との差として書き分けましょう。差として書くと、本人は何が変われば「できている」のかを考えやすくなります。

3.1. 2年目社員に期待することを、1年目との差で書き分ける

期待を書き分けるときは、領域ごとに1年目にできていればよいことと2年目に期待することを並べ、確かめ方まで決めておきましょう。職場の仕事に合わせて、次の表の言葉を書きかえて使ってください。

領域 1年目にできていればよいこと 2年目に期待すること 確かめ方
仕事の進め方 教わった手順どおりに進められる 任された仕事の段取りを、期限から逆算して組める 一件を最後まで任せ、途中で相談に来る時期を見る
相談と判断 迷ったときに上司やOJT担当に聞ける 自分の案と理由を持って相談できる 相談のときに、本人の案が先に出てくるか
報告 聞かれたら進み具合を答えられる 遅れや問題を、聞かれる前に伝えられる 遅れが分かってから上司に届くまでの日数
周りとの仕事 チームの中で自分の担当をこなせる 前後の工程や社外の相手と自分で調整できる 調整が要った場面で、誰に何を頼んだか
後輩との関わり 特に求めない 1年目に困ったことを、来春の新人に伝えられる 新人を迎える前に、伝えたいことを挙げてもらう
学び 教わったことを身につける 次に伸ばしたいことを自分で決めて伝えられる 1on1で本人が挙げる「次に伸ばしたいこと」

確かめ方は、面談用の課題を用意しなくても、上司が日々の仕事の中で見られることに絞っています。

3.2. 一度に求めるのは2〜3項目に絞る

表の項目を一度にすべて求めると本人の負担が大きくなりやすいため、期待は半年ごとに2〜3項目に絞って伝えましょう。

例えば、段取りも報告も後輩への関わりも、一度に求められたとします。何から手をつければよいのか、迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。

2章の調査でも、2年目の回答者の50.7%が「仕事量が多い」と答えていました。2年目社員に期待することを足すときは、今の仕事から何を減らすか、誰に渡すかもあわせて決めましょう。期待を足すだけでは、本人には「仕事が増えた」としか伝わらないおそれがあります。

3.3. 「できている」と伝える基準も決めておく

期待を言葉にするなら、できたときにそれを本人に伝える基準も決めておきましょう。1年目は、できるようになるたびに周りから声がかかりやすい時期です。

2年目になると、できて当たり前と受け取られやすくなります。本人が「よくやっている」のか分からない背景には、できていることが伝わっていない場合もあるでしょう。

表の「確かめ方」は、そのまま「できている」と伝える基準に使えます。例えば、遅れを聞かれる前に知らせてくれたときは、次の1on1でその場面を挙げ、できていたと言葉にしてみてください。

4. 2年目の1on1の続け方

忙しい時期に、先の日程まで決めておくのは、あなた自身にとっても負担に感じるかもしれません。それでも、2年目の1on1は「何かあったら言って」の随時に切り替えず、間隔を決めた定期の予定として続けましょう。

4.1. 月1回以上を目安に、日程は先に決めておく

2年目の1on1は、月1回以上を目安に、先の分までカレンダーに入れておきましょう。「何かあったら言って」は、相談に行くかどうかの判断を本人に任せる言い方です。

新人の期間が過ぎると、「こんなことを聞いてもいいのか」と迷う人もいます。決まった日に話す場があれば、本人が相談する理由を探さなくても済みやすくなります。

間隔は1年目より空けてもかまいませんが、上司の都合で延期したときは、上司の側から次の日を示しましょう。次はいつにするかを、本人からは言い出しにくいと感じる人もいるからです。

4.2. 2年目の1on1で話すことと質問例

「どうですか」と聞いて「大丈夫です」と返ってきた経験は、あなたにもあるかもしれません。大まかな問いかけは答えも大まかになりやすいので、仕事の名前や時期を入れて尋ねてみましょう。

2年目の1on1では、任された仕事の手応えと期待とのずれ、次に伸ばしたいことの3つを中心に、次の表のような質問で話を進めてみましょう。

テーマ 質問の例 ねらい
任された仕事の手応え 「この1か月で、一人で最後まで進められた仕事はどれですか」 本人の手応えと、上司の見立ての違いを知る
期待とのずれ 「いまの仕事で、自分に期待されていると思うことは何ですか」 上司の期待と本人の受け止めのずれを見つける
期待とのずれ 「来春に新人が入ったら、自分はどんな役回りになると思いますか」 後輩を迎える前に、期待をそろえる
次に伸ばしたいこと 「次の半年で、任されてみたい仕事はありますか」 本人の希望を仕事の割り振りにつなげる
相談のしかた 「最近いちばん迷った仕事は、誰に相談しましたか」 上司以外に相談できる相手がいるかを知る

質問は毎回1つか2つを選び、前回の1on1で出た話の続きから始めると、会話がつながりやすくなります。「自分に期待されていると思うこと」の答えが3章で決めた期待とずれていたら、その場で言葉を合わせ直してみてはいかがでしょうか。

4.3. 「大丈夫です」が続くときは、前回の話から尋ねる

「大丈夫です」という答えが続くときは、前回の1on1で本人が話したことを挙げて尋ねてみましょう。例えば「前回は来月からの案件が不安だと話していましたが、始まってみてどうですか」のように聞きます。

あなたが前回の話を覚えていて挙げることで、「聞いてもらえている」と感じる人もいます。先の話をしなくなった、相談が減ったといった変化に気づいたら、決めつけずに話を聞く機会にしましょう。

変化が続くときの見方は、離職の予兆はどこに出る?で紹介しています。

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5. 1年目の記録を2年目につなぐ

1年目に積み重ねたことが、2年目の最初の1on1で一から説明し直しになってしまう。あなたの職場でも、そんなもったいない場面は、引き継ぎの仕組みで減らせます。

1年目の記録は、OJTが終わる前に、OJT担当と上司と本人の3人で引き継ぎましょう。項目と時期を先に決めておけば、配属先ごとの漏れを減らせます。

5.1. OJT担当から上司へ引き継ぐ項目

引き継ぐのは、OJT担当が1年間で見てきたことと本人が口にした希望であり、次の6項目を1枚にまとめるとよいでしょう。

項目 書くこと 気をつけること
一人でできるようになった仕事 仕事の名前と、任せられる範囲 「だいたいできる」で済ませない
時間がかかった仕事 つまずいた場面と、役立った教え方 評価の材料として書かない
本人の強み OJT担当が見た場面と、本人が挙げた手応え 本人の言葉をそのまま残す
挑戦したいこと 本人が1年目に話した希望 書く前に本人に確かめる
相談のしかた 誰に、どんなときに相談していたか 性格の評価を書かない
2年目に期待すること 3章の表から選んだ2〜3項目 上司が決め、本人と言葉を合わせる

「向いていない」「消極的」のような見立てを書くと、2年目の上司は本人に会う前から見方を決めてしまうことがあります。書くのは、仕事の場面と本人の言葉だけにしましょう。

5.2. 引き継ぎの手順

引き継ぎは、OJTが終わる1か月ほど前から、次の手順で進めましょう。

  1. OJT担当が、5.1の6項目を1枚に書く
  2. 本人が読み、直したいことや書き足したいことを伝える
  3. OJT担当と上司と本人の3人で、30分ほど話す
  4. 上司が、2年目に期待することを2〜3項目に絞って伝える
  5. 2年目の最初の1on1の日を、その場で決める
  6. 3か月後の1on1で、引き継いだ項目と期待を見直す

手順2で本人が先に読むのは、自分について何が引き継がれるのかを知っておくためです。手順3では、この1年でできるようになったことを、OJT担当から本人の前で上司に伝えてもらいましょう。2年目に入ると、1年間の成長を周りの言葉で聞く機会は少なくなりがちだからです。

5.3. 記録は、上司が変わっても読める形で残す

引き継いだ記録は、手元のメモで終わらせず、本人も確かめられる形で残しましょう。記録が残っていれば、異動で上司が変わっても、新しい上司は本人の強みや挑戦したいことを知ったうえで1on1を始められます。

仕組みの運用として確かめるのは、引き継ぎの有無と、1on1が決めた間隔で続いているかの2点で足ります。中身まで読もうとすると、本人もOJT担当も、読まれる前提で言葉を選びやすくなるからです。

5.4. 来春の新人を迎える前に、今の2年目から始める

OJTがすでに終わった2年目にも、引き継ぎの場は今から設けられます。来春の新人のOJT担当を決めるときに、今の2年目の人に向けた引き継ぎも、あわせて予定に入れましょう。

今の2年目にとって、来春は初めて後輩を迎える時期です。その前に期待と相談相手がはっきりしていれば、後輩に目が向いても1on1を続けやすくなります。

まとめ

● 2年目は、仕事を教わる場面が中心の時期から、任される場面が増える時期に変わる。大卒では、2年目にも1年目とほぼ同じ割合で離職している

● 「2年目の壁」は、支えが一度に薄くなること、期待が言葉にされないこと、1年目の振り返りが引き継がれないことの3つの切れ目から生まれやすい

● 2年目社員に期待することを1年目との差で書き分け、定期の1on1とOJT担当からの引き継ぎで、1年目と2年目をつなぐ

2年目の人の中には、自分がいま何を期待され、どこまでできているのかを知りたいと思っている人もいます。まずは来春の新人が入る前に、OJT担当と上司と本人の3人で30分話し、期待を2〜3項目に絞って次の1on1の日を決めるところから始めてみましょう。